ごあいさつ

「日本の社会保障 -その現状と私たちの取り組み-」理事長お写真

 

5年に一回行われる国勢調査では、2015(H.27)年が第20回目の調査となりました。その結果、日本の総人口は10月1日の調査時点で1億2711万47人であり、5年前の2010(H.22)年の結果と比べると、約95万人(0.7%)減少したと総務省が今年の2月26日に発表しました。1920(T.9)年に第1回の国勢調査が開始されて以来、人口が減少したのは初めてだとの多くの新聞が一面トップで報じました。結果を知って驚いたような報道のあり方に私は少し違和感を覚えました。なぜなら、高齢化も人口減少も着実に、予測通り進んでいると思われるからです。  

厚生省人口問題研究所と特殊法人社会保障研究所との統合により、1996(H.8)年「国立社会保障・人口問題研究所」が誕生しています。人口や世帯の現状や将来への予測を含めた動向を正確に把握することが、国を維持するための社会保障制度のあり方に大きく関連すると考えるからこそ設立された国立の研究機関であろうと思います。 国は、2008(H.20)に「持続可能性から社会保障の機能強化へ」をテーマに「社会保障国民会議」を持ち、具体的な検討を始めています。やや遅きに逸したという批判もあるかもしれませんが、いよいよ差し迫ってきた社会保障のニーズは高まる一方である反面、財源の見通しが立たないという危機的状況への対応が政治の場で具体的に論理される舞台が整ってきたということでしょう。 その流れから、2009(H.21) 年の「安心社会実現会議」を経て、2010(H.22) の政府・与党社会保障改革検討本部があり、2011(H.23) の社会保障・税一体改革成案から、2012(H.24)の 自民党・民主党・公明党の3党合意に基づく議員立法である「社会保障制度改革推進法」につながる経緯が生まれました。 その後、2013(H.25)年8月に「社会保障制度改革国民会議」の報告書が提出され、具体的な方向性が示された後、実現に向けて同年10月に「社会保障制度改革プログラム法案」が出され、2014(H.26)年6月の「医療介護総合確保推進法」となり、基金、地域医療構想、地域包括ケア体制といった、これからの日本の社会保障のあり方について、道が示され、現在、その流れに沿って活動が行われている過程です。

高齢者の医療・介護への対応だけではなく、生活保護などの福祉や子育て支援など社会保障ニーズは増大する一方です。しかし、それを賄う財源の目処が未だに立っていません。国民がこれまでと同じ額の負担によって、これまでと同等の社会保障の給付、つまり、医療、介護、教育などの社会サービスを受けることはできない状況と総括できると考えなければなりません。 前述したように、近年の政治での社会保障分野の対応の流れを振り返れば、その対応が急に加速していることはお分かりいただけると思うのですが、それに比して、国民の現状についての理解は深まっているとは思えません。また、知らしめるための努力もさして熱心に行われるようになったとも感じられないのです。
年金・医療・介護・子育て支援といった社会保障だけではなく、教育においても、国民からの要望は増えることはあっても減ることはありません。それなのに、財源がない現実を国民がそれほど深刻にとらえていないとしたら、現場では不満ばかりがあふれるに違いありません。
その認識のギャップの現実に焦りに似た気持ちを持ちながら、何とか満足いただけるケアを提供することができるようにと、私たちのヘルスケア機関の運営を考え続けています。 たとえば、先の国勢調査の結果ですが、39道府県で人口が減少(最大は秋田の5.8%で、福島、青森、高知と続く。大阪も減少しています)する一方で、8都県で増加(トップは沖縄の3.0%、東京が2.7%、以下愛知、埼玉、神奈川、福岡、滋賀、千葉と続く)しており、首都圏への人口集中の実態が明らかとなりました。このままでは中央と地方で異なる制度にならざるを得ないと思っています。 また、世帯数が5340万3226で2.8%増加する一方で、1世帯当たりの人数は2.38人で、最少を更新しています。このことは、高齢者の世帯の増加と同じ意味を持っています。子供たちが独立し、うちを出て行った後、しばらくは二人で暮らしていても、どちらかの身体の具合が悪くなるとします。入院したり、手術を受けたり、そして、介護が必要となります。それでも、またうちに帰って二人で住める場合もあるでしょうが、状況によって、それはとても難しい場合もあります。さて、どうするべきでしょう? さらに、どちらかが先に死を迎えることも考えねばなりません。一人が残されます。平均寿命からすれば、残されるのは女性が多くなるでしょう。では、彼女は、どこでどんな暮らしをするのがいいのでしょう? また、できるのでしょうか? 一人暮らしの良さを満喫できる時期も味わえるかもしれません。しかし、ご本人の体調が悪くなるとそうはいきません。さまざまな社会サービスが必要ですし、最終的にはご自宅での生活を断念しなければならないかもしれません。 そして、現在8割の方が病院で亡くなっているという統計があります。しかし、高齢化に伴い、20年後には死亡者が急増する「多死社会」を迎えることが予測されています。これは経済の予測とは異なり、ほぼ確定的なものです。その時、どこで人生の最終段階を過ごすことができるのでしょう。また、どうすればご本人の希望に沿った過ごし方ができるようになるのでしょう? 私たちの環境は大きく変化しています。昨日まで当たり前であったことが、明日も保証されているとは限らないのです。知恵を出し合わねばならないでしょうし、お互いがもっと努力するべきところも、当然、生まれてくるのではないでしょうか。

私たち「はぁとふるグループ」では、こうした社会環境の変化に少しでも対応しなければならないと考え、来年度以降に新たに取り組むことがいくつかあります。

島田病院は運動器疾患の診断・治療・手術・リハビリテーションをご利用いただきやすくするとともに、そのケアの精度を上げることを着実に進めていきたいと思います。5月にオープンする新病院では、最新機器による検査、そして経験豊かな専門医による診断と治療、中でも新しくなり増室される手術室では安全に多くの手術を行えるよう配慮しています。 また、これまでの43床に加え、45床の病棟を開設します。ここでは、手術後のリハビリテーションにより安全にご自宅に帰っていただくケアを提供しますし、強い痛みで日常生活にお困りの方の治療や介護、さらに脳卒中や脊髄損傷、交通事故で、急性期の治療を終えられた後、残っている機能障害など専門的なリハビリテーションを行い、できるだけもとの生活に帰っていただくような対応を目的とした方々の入院をお受けするつもりです。 少し先になりますが、現在島田病院として使用中の建物は来年7月に新しく生まれ変わる予定です。そこでは、疾病予防の健康増進施設としてご利用いただいている「はびきのヴィゴラス」をリニューアルして、現役スポーツ選手のさらなる競技力向上やスポーツ障害予防、中高年の健康増進や運動器疾患の予防、また、高齢者の転倒予防などの介護予防対策に加え、女性の一生を見据えての運動による生きがい作りウィメンズヘルスの充実も計っていく予定でいます。

八尾はぁとふる病院では、従来からの回復期リハビリテーション病棟や医療療養病床における医療・介護やリハビリテーションに加え、新たに「通所介護 はぁとふる プラス」を4月に開設し、在宅での生活の支援を、その方の状況に応じてきめ細かく対応できるようにいています。訪問での診療やリハビリ、看護・介護のネットワークも充実させ、地域の他の事業所の方々と協力して安全な生活のサポートを充実させて参ります。これらの組み合わせにより、ご自身がお住まいの地域で、どのような状況になられたとしても安心して暮らしていただける「地域包括ケア体制」に少しでも貢献できればと思っています。  

介護老人保健施設「悠々亭」では、これまでの地域の皆さまや担当の行政の窓口、そして、他の事業所の方々といった交流の輪を強化し、この地域でお住まいの高齢者の皆さまのご希望やご家族の計画を十分に伺いながら、最適な対応ができるよう組織の再構成、スタッフの教育・研修を進めて参ります。八尾地区と同様に、羽曳野地区での「地域包括ケア体制」への貢献を果たして参りたいと思います。  

国全体の大きな話しから、非常に限られた範囲の私たちの計画までご紹介させていただきました。別々に発行していた広報の紙面を統一するという機会に、ご挨拶をかねて私の思いをご披露させていただきました。

どうぞ、今後ともご利用いただくとともに、お気付きの点やご要望、ご不満など率直にお寄せいただきたいと思います。これからもなにとぞよろしくお願い申し上げます。