耐性菌防止の戦略 Ⅳ

 今回は、「続・賢く抗菌剤を使う」をご紹介いたします。

賢く抗菌剤を使う(前回の続き)

★保菌(※1)に抗菌剤を使用しない
(1)抗菌剤は、感染症の治療に使用すべきであるつまり何らかの菌が検出されたとしても感染症状のない保菌状態にあるケースについて、抗菌剤を使用すべきではない。

★バンコマイシンを安易に使うべきではない事を知る

(1)バンコマイシンを安易に使用することは、耐性菌を発生させ促進させる事である。

1950年に、ペニシリンに耐性を持つブドウ球菌が現れたため、様々な抗菌剤が開発され使用していった結果、1970年にメチシリンに耐性を持つ黄色ブドウ球菌(MRSA)が現れ院内感染が問題になった。その後、MRSA治療薬としてバンコマイシンを使用していると、1990年代にはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が、2002年にはついにバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)が報告された。バンコマイシンは、すばらしい抗菌剤であるから、慎重に使用し耐性菌を増やさないようにしなければならない。

★治療が終わればあるいは否定的な時は治療を終了する
(1)不必要な抗菌剤の治療をやめる。

例えば、感染症が治癒した時や感染症とはいいがたくかつ培養の検査が陰性であった場合、感染ではないと主治医が診断した場合を上げている。いずれも抗菌剤の必要性がなくなれば速やかに抗菌剤治療を終了する事を意味している。

(※1)保菌…明らかな症状はないが、病原菌を保有している状態

 前号から「賢く抗菌剤を使う」についてお話をして参りました。抗菌剤は、とても身近で頼りになる薬です。この薬のおかげで人類は助けられてきました。だからこそ、慎重に使わなければ“新型の感染症”が現れた時に、全く抗菌剤の効果がないような結果になったら・・恐ろしいと思います。今も、いろいろな「菌」達は、形や性質を変えて抗菌剤と戦う準備をしていることでしょう。医療側も患者さま側も共に協力して「菌」達の戦いに挑みましょう。

さて、次号は最後のカテゴリーである「感染の伝播を防止する」をご紹介いたします。

法人事務局 感染安全管理担当
感染管理認定看護師 森下 幸子