読み物BOOKS

2000.12.01

プチトマト 2000年12月号

 前回は、腰痛の大半の原因は、骨ではなくて、筋肉だという話をしました。二本の足で立って生活する以上、お尻の上、背骨との境に当たる腰の部分に疲労が貯まります。その疲労が、年齢を重ね、身体を支える筋肉が老化してくると、抜けにくくなります。それが、問題なのですね。若い頃なら一晩ぐっすりと寝れば、すっかり、もとの体調に戻っていたでしょうが、年を取るとそうはいきません。「よく寝たのに、まだ身体の芯の疲れがとれない」と嘆くようになるのです。そんなこと、お感じになりませんか? 徹夜は今でも平気ですか? 仮に、一晩寝ないで頑張ったとしても、翌日、反動で仕事にならないなんていう経験はありませんか? 知らない間に、体は弱ってくるのですね。しかし、この現象を仕方のないこととあきらめてばかりいては、ますます、弱ってしまいます。体調を維持するために、それなりの工夫をすれば、必ず成果も期待できると思います。ただし、それには、理屈を理解して、正しいやり方で、しかも、継続して努力しなければなりません。

 まず、とれにくくなっている疲労をうまく取って、回復を促す工夫からです。疲労を取る一番簡単で有効な方法は、休むことです。安静というのは、非常に大切な対処方法だと思います。無理をしないで寝ているというのは、安全で、しかも費用もかかりませんし、格別の努力はいりません。ただし、この連載で、何度も強調してきましたように、安静は長くしすぎると弊害が生まれます。筋肉が弱くなってしまうのです。同時に、固くなって柔軟性がなくなるという余計なことも起こってきます。温泉もいいですね。疲れた筋肉は循環が悪くなっていますから、暖めてやると、血が通い初めて疲労物質を洗い流してくれるのです。軽いマッサージも効果的でしょう。固くなった筋肉をうまくほぐすことは、暖めることと同様に、血の循環を良くする効果を持っています。

 安静に温泉は、確かに効果があるのですが、長続きしないという欠点もあります。人任せばかりでは足りないのです。その点、暖めた上で、自分で、身体をほぐす体操は、柔軟性を保つ効果もあり、持続効果も期待できるので、非常に良い方法です。しかし、これは、自分から動かなければならないのですから、意志力を必要とします。

 しばらくじっとしていて、次に動き始めるときに身体がきしむような感じを受けることがありませんか? それは、固くなってきている証拠です。そうした場合、いったん動き始めると最初に感じたぎこちなさは消えていきます。血液が通い初めて、柔らかくなってきたために動きやすくなったと考えられます。これは病気ではありません。動けば解決するのですから、話は簡単です。普段から、固まらないように、積極的に動かしてやりさえすれば、機嫌良くいつまでも使える身体を保つことができるはずです。

 それに引き替えて、動くに連れて出てくる痛みやシビレ、引きつりなどといった症状はなかなかやっかいなものです。これは、病気として、私たちの治療の対象となります。普段から、疲れをうまく取り除くには、ほぐしたり、伸ばしたりする体操を続けることが一つの対策だと説明しました。膝を伸ばして立った状態から、身体を前に倒して、指先を地面に近づけてみてください。両手の手のひら全体が床につくほど柔らかい人もおられるでしょうが、地面から指先が15センチ以上離れている人もおられるのではないでしょうか?これは、背骨や股関節の柔軟性を調べるテストです。柔らかい人は固い人に比べて、腰の痛みを引き起こしにくいといわれています。きっと、いろんなストレスをうまく吸収することができるからでしょう。

 次に大切なのは、つかれにくい身体を保つという方法です。放っておくと、年と共に、筋力だけではなく、筋肉の持久力が衰えてきます。実は、一回で重たいものを持ち上げるような「筋力」よりも、ある程度の力を出し続けることができるような「筋持久力」の方が、姿勢を保つような動作の場合、大切なのです。

 これを維持するような訓練によって、同じ姿勢をいつまでも保つことができるようになります。仰向けに寝て両足を揃えて膝を伸ばしたまま、ゆっくりと上げていきます。途中は苦しいでしょうが、身体と直角になるくらい上がると楽になりますね。それでは、上げた両足をまた、ゆっくりとおろしていきましょう。そして、踵が床から20センチくらいのところでいったん止めてみてください。そして、できるだけ粘って、その位置を狂わないようにしてみてください。足が震えてくるかもしれませんね。一分間、つまり60秒の間できた人は合格です。腹筋の下の方に関しては、そこそこの持久力があります。

 同じく上向きで、膝をたてて横になりましょう。足首のところを誰かに支えてもらってください。両手を頭の後ろで組んで、さぁ、起きあがってみてください。できましたか? では、そこから、先ほどと同じようにゆっくりと下ろしていきましょうそして、頭が床から20センチくらいのところでストップです。また、一分間、止まっていられるでしょうか? これができれば、腹筋でも上の部分がしっかりしているあかしと言えます。

 このように、筋肉の疲労と、身体を支える筋肉の持久力や、柔軟性は、腰の痛みと強く関連しています。疲労をうまく取り、将来に備えて、持久力を付け、柔軟性を保つことは、腰の痛みの予防となるのです。

 実は、こうした、努力は、腰のためだけではないということを、次回はお話ししましょう。



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