読み物BOOKS

2000.03.01

プチトマト 2000年3月号

 

前回は子供の骨折を取り上げました。今回は、もう一度、高齢者の骨折を考えてみましょう。

誰でも、年をとります。年をとると、残念なことに少しずつ骨が弱くなってきます。ことに、女性にとっては、骨が弱くなることはとても深刻な問題です。このことは、確か、以前お話ししたと思います。ここでもう一度、女性が骨に関しては男性よりも不利だという理由を復習してみましょう。

一つ目の条件は、女性は、そもそもいちばん骨が丈夫になる世代でも、男性に比べて、骨のミネラルの値(骨量)が低いことです。二つ目は、そのミネラル、主にカルシウムですが、を失う機会が多いことです。妊娠・出産、そして、授乳という経験はわが子に自分のカルシウムを与える行為です。昔、私の祖母は、子供をたくさん産んで、そのために歯がぼろぼろになったなどとよく言っていました。ともかく、体内のミネラルが子供に与えられるのは事実です。したがって、授乳期のカルシウムの補給は大切になります。

三つ目は、更年期に起こります。体内のホルモンが激しく変化します。そのために、10年近く経つと、骨のカルシウムを保つ力がなくなり、体外に出ていってしまうことになります。女性の骨が男性に比べて弱くなってしまう四つ目の原因は、女性が男性よりも長生きであるということです。人生50年の時代では、更年期を過ぎた女性は、程なく人生を終えることになります。しかし、現代では違います。女性の平均寿命は83歳を越えています。皮肉な言い方になりますが、女性はどんどん骨が弱くなりながら、生き続けているわけです。こういった、悪い条件に、栄養の偏りや運動不足が重なると、余計に骨は折れやすくなってしまうのです。

大体、年をとると、こけやすくなります。視力が衰え、注意も散漫となって、よくつまづくことになります。その上、よろけたときに元に戻す体力も低下しています。平衡感覚も鈍ってきますから大変です。もろい骨なのに、転倒しやすいのですから、骨折は一定の年代を越えると急に増加することになります。転倒するとき、前に行くと手をついて手首の骨が折れてしまいます。しりもちをつくように倒れると背骨の骨がつぶれるように折れることがあります。圧迫骨折といわれます。肩から横に倒れると肩を脱臼したり、二の腕の骨である上腕を折ったりします。横向きに倒れるとき骨盤からになると、やっかいな股の付け根の骨折が起きるのです。これはそれ以外の骨折に比べて、治りにくく、もとのように歩くことができるようにするには、多くの場合、手術が必要です。

こんな情けない事態にならないようにするにはどうすればいいのでしょうか? いつもこの連載で私が強調しているのは、体力の維持についての努力です。体を動かす習慣を付けると骨も弱りにくくなります。地球上の重力を浴びているというのは骨が強くなる絶対条件なのです。同時に運動は、筋力の低下を防ぎます。そのおかげで、ちょっとふらついたくらいでは転倒しない身体を作ることができるでしょう。歩くことは、とても良いことだと思います。体重のかかる運動ですし、骨にも筋力にも良い影響を与えます。その上、お天気が良ければ、骨を丈夫にするビタミンDを活性化する日光を浴びることにもなります。

さらに、予防対策として重要なのは、栄養についての配慮です。カルシウムを多く含んだ食品を意識的に取り、嗜好品に偏らない食生活を送ることが好ましいでしょう。

最後に、いくら高齢の方でも、とても元気に過ごしておられる方には、共通点があります。それは、精神面での充実です。何か目標がある方や、熱心に取り組む趣味を持っておられる方は、たとえ、不幸にして骨折しても、そうでない方と比較すると早く治るように感じます。したがって、機能もスムースに回復されるのです。

これからの老後に備えるには、運動や栄養面での努力に加えて、生き甲斐につながる楽しみ作りも重要だと痛感しております。

今回の話は以前書いたものと重複する部分が多かったと思いますが、大変大切なことだと思い、再度、お話しさせていただきました。今からでも始めましょう。自分や周囲の納得する老後に向けて。



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