読み物BOOKS

1999.08.01

プチトマト 1999年8月号

 このシリーズでは主に、膝の痛みを起こす病気を取り上げています。水がたまることや、リウマチについて、簡単にお話ししてきました。ことに、膝を守ってくれる筋肉(筋力)の大事さを強調しました。
 さて、今回は、俗に言う「おばあちゃんの膝-変形性膝関節症-」にからめて、老化について、考えてみましょう。年を取ると、人間の身体にはさまざまな変化が生まれてきます。皮膚や髪の毛の変化はみんなが知っていますね。内臓でも、骨や関節でも、同じです。外から簡単には見ることはできないので、意識することが少ないかもしれませんが、加齢による影響は、すべての臓器に、平等に、起こります。しかし、起こり方や程度、時期は、一緒ではありません。個人によって異なります。実際の年齢を聞いて、びっくりするくらい若くつやつやした肌で元気な方もおられますし、反対に、若いくせに、生気がなく、年寄り臭い人もいます。どうして、そんな違いが生まれてくるのでしょうか? 
 人間の老化や、元気さに影響を与える要素は、大きく三つに分類することができます。一つは持って生まれたものです。遺伝素因もそうですし、民族的な特性もあるでしょう。これは、生まれたときから決まったもので、今さらどうにも変えようのないものです。元気な方を「あの人のうちは代々長生きの筋やから」などというのは、この血筋を意味しているのでしょう。逆に「ガンの家系」だと気に病んでいる方もおられます。
 二つ目の要素は過去の歴史です。大きな病気をして、長い間入院してきたとか、ケガのために動かない部分ができてしまったとか、どんな仕事をしてきたとか、振り返ることのできないこれまでの生活や人生における歴史が老化に影響を与えるのです。これらの二つの要素は、残念ながら、現時点で変更させることは不可能です。もっとも、遺伝子治療がもっと一般的になれば、可能性はないわけではありません。しかし、神の仕業というか、人間が踏み入れることの難しい分野であることには違いありません。
 さて、ここで一番お伝えしたいのは、三つ目の要素です。それは、現在の生活習慣です。どれくらい睡眠をとっているか、歩くなど運動を心掛けているか、きちんとバランス良く十分な栄養を摂っているか、酒やたばこはどうか、など、今どのような生活をしているか、ということが大いに関係があるのです。これは、神に頼る必要はありません。自分自身の問題です。たとえ、膝の軟骨が少しくらいすり減っても、不思議なことに痛みのない人もたくさんおられるのです。以前もお話ししましたように、重要なポイントは、膝にかかる負担と、膝を守る筋力とのバランスだと思います。
 よく、「歩く方がええんでっか、歩かん方がええんでっか?」と尋ねられます。歩くというのは、走るほどではないにしろ、膝に全体重がかかります。これは、膝にとって負担であって、攻撃的な動作だということを忘れてはなりません。しかし、こういった負担は、適切な範囲であれば、むしろ必要なのです。大切なことは、どの程度が適切な刺激かを見極めることです。これは手探りで決めていくしか方法がありません。少しずつ調節しながら運動量を増していくのです。歩くよりは自転車では負担が軽いですから、距離や時間を決めて、自転車こぎをするのも良い方法でしょう。また、プールなどを利用して、浮力によって膝への重さを軽くして歩くのも、優れた方法です。体重はかからず、その上、水の抵抗に逆らって前へ進もうとすることで、下半身の筋力強化の効果を期待できるでしょう。水中を歩くときには、前進するだけではなく、かにのような横歩きや、後ろ向きに歩くようなやり方も、お尻や足の筋肉の違った場所を鍛えることになって良いと思います。泳ぐことも、得意な方には効果的なトレーニングとなります。平泳ぎでは、膝を捻ることになるので、ばた足を勧めます。ゆったりと、大きなフォームでのびのびと泳がれるとよいでしょう。
 いずれにしても、運動のポイントは、適切なやり方と量をうまく設定するということです。一番下手なやり方というのは、思いついて、準備もせずに、急にたくさんの量をいっぺんにやるという方法です。予備力の低下した身体には急な変化というのがこたえます。
 膝だけではなくて、全身にとっても、うまく負担を調節しながら、運動するというのは意義深いことだと思います。人生の長い戦略を立てて、上手に年を取りたいものですね。



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