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2025.10.01
私事で恐縮なのですが、私は来年、後期高齢者である75歳になります。それでも、今は、臨床医として、週に4回の外来診療を担当しています。初めて外来という患者さんが受診される窓口となる場を担当したのは、医師になって3年目だったと思います。計算してみると、45年目になるのですね。我ながら、長い期間だなぁと少々感慨を持って思い出したりしています。
世間では、今の日本では70歳を超えて働くのが普通になっていて、国際的にも高齢社会というより、超高齢社会のモデル国家だという声があります。しかし、若いときに比べて身体のあちこちが弱ってきて痛みを感じることが多くなり、情けない気分とともに、いつまで、こんな生活を続けることができるのが、不安になったりします。もちろん、仕事が医療やリハビリ、そして、介護に関連したものであることもあり、自分の判断ミスが許されない環境であることは自覚しています。そのため、少しでも人様に自分が原因で、何らかのトラブルが生まれることになる状況は絶対に避けなければなりません。自分のプライドにかけても、その徴候には、一番に自分自身が気づき、現場から離れる決断をしようと思っています。
そんな心境で、周囲を見渡すと、現在の日本は、将来への大きな課題を抱えていることに気づきます。一つ目は人口問題です。
総務省統計局の2024(R6)年10月1日現在の人口推計では、日本の人口は2024年10月時点で約1億2,380万人です。1年間に生まれてくる子どもの数(出生数)と、亡くなった方の数(死亡数)の差が、人口の増減に関わるのですが、下の図のように、2010(H22)年頃から、人口は減少に転じており、その減少幅は次第に大きくなってきています。
厚労省の人口動態統計では、2024(R6)6年の出生数は68万6061人で、前年より4万人あまり減少しています。一方、死亡数は160万5298人で、前年より約3万人増加しています。出生数と死亡数の差である自然増減数は約92万人で、前年の減少と比べると、減少幅が7万人大きくなっています。
日本の都道府県別人口では、人口90万以下の県が山梨、佐賀、福井、徳島、高知、島根、鳥取と7県ありますが、一年間で、この一つずつが消失するような状況とも言えるでしょう。
こうした人口全体のうち65歳以上の人口は3,624万人となっています。全人口の中での割合(高齢化率)は29.3%となり、徐々に3割に近づいています。内閣府からの「2022(R4)年版高齢社会白書」では、下の図のように、世界の高齢化率がどのように変化してきたか、そして、それが今後どのように変わっていくかを示しています。世界の主要国の中では、今の時点ではダントツの位置を占めていることが分かります。
さらに、75歳以上の人口では、総人口の16.8%に当たる2,078万人で、65歳以上の高齢者のうち75歳以上が半分以上を占めています。
これらの結果を要約すると、次のようになります。
①出生数が減り、死亡数が増えて全体の人口、ことに日本人の人口が減少している
②子ども、生産年齢、高齢者の三つのグループに分けると高齢者以外は減少している
③ことに75歳以上人口は増加している
④外国人人口は急速に増加している
さて、次の問題は、社会全体の働き手が減ることでの経済や事業への影響です。テクノロジーの導入で、生産現場などはずいぶん省力化が進んでいるようですが、中には、機械では変わりのできない業種もあります。その代表が、医療や介護です。
そもそも、65歳以上の高齢者、その中でも、75歳以上の人口が増えるとされていますが、加齢は、否応なしに身体に影響を与えます。外見も変わりますし、身体を維持してきた各種の臓器の機能も低下していきます。そのために、活動がしにくくなり、また、いくつかの病気を抱えて生きることにもなります。
必然的に医療の費用は増えることになりますが、その費用をまかなう仕組みとして、働き手の人たちに任せるのも限界がありますし,そもそもその彼らの絶対数が減ってきているのです。この財源問題については、仕組みをしっかり議論する必要があると思っています。
しかも、これからの時代は、介護が必要な状態になっても、お世話をする人間の数が減ってしまって、そんなにたっぷりとした陣容で、介護をする施設を備えることはできなくなることが予測されています。
困りましたね。どうすれば良いのでしょうか。
悲観的なデータばかりではありません。スポーツ庁の「2022(R4)年度 体力・運動能力調査」をご紹介します。この調査では、65~79歳では、次の項目での新体力テストを実施しています。項目は、握力・上体起こし・長座対前屈・開眼片足立ち・10m障害物歩行・6分間歩行の6種目となり、その合計点を年ごとに示したのが次の図です。
新体力テストの合計点の年次推移(65~79歳)
昭和の時代に比較して、高齢者の体力は上がっているのです。しかし、グラフの後半伸びが止まり、下がったデータもあります。これは時期と併せて推察すれば、コロナ禍での外出規制や活動制限といった蔓延防止策の実施による影響だと思います。
これはいい教訓だと私は考えています。皆さん、動きましょう。そして、人と交わり,話し、大いに盛り上がりましょう。それが、機能低下を防ぎ、自分自身の高齢化によるマイナスの影響をできるだけ少なくする方法ではないでしょうか。
私は、私自身に対してこのように訴えかけ、自然に外出や人と会うことが面倒になってきている自分の背中を押すようにしています。
自分で自分のことを判断し,同時に、自分のことをできるだけ自分でできるように保つように努力することが大事ですね。もちろん、できなくなることもあります。その時は,胸を張って手伝ってもらえば良いのだと思っています。
課題の多い状況ですが,みんなが自分の責任を認識し、その役割を果たすことができれば、何とか将来に光を見ることができるのではないかと思っています。皆さん、どう思いますか?