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2024.11.01

何を信じるのか?(2024.11)

 

 今年も残り少なくなってきました。私にとっては選挙とその結果が印象に残る年の後半だったように思います。大阪府民である私には直接の関係はないのですが、7月7日に投票が行われたのが東京都知事選挙でした。2期務めた実績もある小池百合子さん(71)が2,918,015票(42.8%)を獲得しての圧勝でした。注目を集めたのは2位争いでした。広島県安芸高田市の市長を務めていて、東京都民にはまるで知られていない石丸伸二さん(41)は無所属で政党の推薦や支援を受けずに立候補し、2位になりました。2番手と予測されていたのは、20年の議員経験があり、圧倒的な知名度を誇る元参議院議員の蓮舫(56)さんだったのですが、彼女の1,283,262票(18.8%)を40万票近く上回り、1,658,363票(24.3%)を獲得して2位となったのです。石丸さんは、安芸高田市長時代からYouTubeでの積極的な発信で知られていて、今回もYouTubeを中心にネットで知名度を高めるという方策を活用しています。政党の支援を受けずにこれだけの得票を得た例として、「石丸現象」と呼ばれました。

 

 次は10月27日の衆議院議員選挙です。8月14日の岸田文雄前首相の退陣表明と9月の自民党総裁選を経て10月1日に発足した石破茂政権は、支持率が高まりやすい利点を活かそうと考えたのでしょう、政権発足直後の衆院解散に踏み切りました。衆院選の目標は自民・公明両党の議席が過半数の233議席を上回ることでしたが、選挙結果では与党が過半数を割り込むことになりました。メディアの予測は伯仲している中での結果でした。
 そのすぐ後の11月5日に投開票されたのが、アメリカ大統領選挙です。共和党の前大統領ドナルド・トランプと対抗馬の民主党の現職副大統領カマラ・ハリスとの争いで、両者が拮抗していて大混戦で予測がつかないと多くのメディアが報道する中、蓋を開けると、トランプの圧倒的勝利という結果に終わりました。王手メディアの報道との食い違いが話題になりました。
 そして極めつけが11月17日投開票の兵庫県知事選挙でした。無所属前職の斎藤元彦さん(47)はパワハラなどの疑惑告発文書問題で、兵庫県議会から不信任を議決されました。県議会の解散ではなく、自身の失職を選び、いわゆる「出直し選挙」に立候補する方針を選択したのです。これまでの経緯から返り咲きは難しいと予測されていました。代わりに政党の支持を受け下馬評の高かったのは元同県尼崎市長稲村和美さん(52)でした。開票結果では彼女を含め無所属新人6人を破り、斎藤さんは見事に再選を果たしたのです。現在、PR会社の関与が公職選挙法に抵触するのではという疑惑が持ち上がっていますが、少なくとも、選挙の結果としては見事に再選を勝ち取ったと言えます。
 そして、これらのいわば「意外な」選挙結果については、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなど、旧来から存在するオールドメディアではなく、近年浸透しているSNSなどのオンラインメディアの影響が取り沙汰されています。

 

 今年後半での印象に残った選挙とその結果を並べてきたのは、何が信用できるのかということを考えてみたかったからです。
世界価値観調査(WVS:World Values Survey)というのがあります。これは世界のさまざまな国の人々の社会文化的、道徳的、宗教的、政治的価値観を調査するもので、1981年に開始されたときはわずか22カ国でしたが、現在は100以上の国と地域が対象となる大規模なものとなっています。結果はおおよそ5年ごとに報告されています。2020年3月に公表された第7回目のものが最新ということになり、本年8回目が実施中です。
その最新の結果から電通総研と同志社大学のメディア・社会心理学研究分野の池田研究室が協力して、国際比較分析を行っています(https://qos.dentsusoken.com/keywords/wvs/)。その結果から、日本人は他の先進国と比較して、マスメディアへの信頼度が高いという結果が紹介されています。他の国が新聞・雑誌に対してほぼ5割以下の信頼度しかないのに、日本だけ7割近くの信頼度となっているのです。

 

政府に対する信頼は他のG7諸国、すなわち、英米、フランス、ドイツ、イタリアといった国と同様に30%台と低いのですが、メディアへの信頼度は高いという日本の特性が示されています。これは、マスコミに限らずネットなど外部からの報道を、鵜呑みして無批判的に受け入れる文化・習慣があるという風にも解釈できます。日本人が今年の選挙の結果など顧みて、オールドメディアの情報とネットなどの情報をどのように使い分けるようになるのか興味があります。
現在はありとあらゆる手段で情報をとることができるようになりました。時には利害の絡んだ意図的な情報提供もあれば、誘導的なフェイク情報も含まれるでしょう。それらに振り回されることなく、知るべきことを正確に把握した上で、自分自身の考えを反映させるという、一歩進んだ情報活用の道が求められているように思うのです。そのために、「何を信じればいいのか」、といつも自問自答しなければならないようにも思います。ある意味で、難しい時代になっているとも言えるのでしょう。
とりとめもないことを書きました。お互いに、自分の足下をしっかり踏み直しましょう。



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