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2024.06.01
5月19日の総会はお天気にも恵まれ、盛会でしたね。おめでとうございます。個人的には、たくさんの方にご挨拶することができて、嬉しかったです。会員の皆さま、ご準備いただいた役員の方々、本当にありがとうございました。
4年以上の期間、新型コロナ感染症のパンデミックということで、蔓延防止の対策により、生活がずいぶん変化しました。流行のありようにより、心の中まで翻弄されたような気さえします。私たち医療・介護に携わるものは特に当事者となって、大きな影響を受けました。何度となく、多数の感染者が同一の病棟内で見られることになり、クラスターとして、病床運営にも大きな制限が生まれました。外来や入院といった基本的な運営体制もそのたびに変更を余儀なくされ、当然収支もマイナスへ触れることになりました。最終的には補助金があり、いくぶん救われたものの、呼吸器疾患を受け入れたり、感染症の患者さんを診る機能がないことから、マイナス分を完全に埋めるほど十分なものとはなりませんでした。
切なかったのは、外部からのウィルスの侵入を防止する観点から、面会を制限せざるを得ないことでした。高齢者の治療や介護では、ご家族となんとかして会っていただきたいと、さまざまな工夫をしましたが、限界があります。ようやく、以前のつながりが戻りはじめ、最近では、通常の面会が可能となっていて、いつもの診療スタイルが帰ってきたと実感しています。
医師の人事では、年度替わりとともに大学から派遣されていた医師の交代があったのですが、驚いたことに、その時、挨拶に来てくれた場面で初めて素顔に接することができたという経験をしました。「そんな顔やったんかいな。」とコメディのような会話を交わしたのを覚えています。
そして、今回の総会です。昨年も参加させていただいたのですが、まだ、リモートの形の運営で、対面の熱量を感じる状況ではありませんでした。今年は久しぶりに「そうそう、総会ってこんな雰囲気だったよなぁ。」と5年前を思い出すような瞬間が何度もありました。皆さんと接して、いろんなお話をする中で、自分たちの仕事は、診断・治療で終わるものではないということ、改めて教えられる機会になったと思います。
そのことを誰よりも感じたのが、当日参加させていただいたリハビリテーションの若い療法士だったことが彼らの報告を読んで分かりました。
彼らの了承を得て、いくつか、ご紹介したいと思います。
「何らかの身体の不調で悩みを持つ人間に迫り、その中身を十分に伺いながら、原因を追求し、少しでも苦しみを軽減できるよう医学的なアプローチに加え、人間同士の交流を交えて一緒に歩んで行くものであることを、再確認できたように思っています。」
「実際にコミュニケーションが取れる人と取れない人がいる中でも言葉をかけることによって笑顔になったり通じている場面があり、たとえ言葉が通じなくても笑顔は共通言語なのだと感じました。SCD・MSAのリハビリ内容として車椅子上での簡単な体操や声を出して歌を歌ったり楽しんでリハビリすることで患者様にも笑顔が見られる場面もあったので、自然と会場全体の雰囲気が良くなったと感じました。そういったリハビリ内容はSCDのみならず、普段のリハビリから改めて患者様の気持ちをよく考え生活背景をイメージすることで最適なリハビリを提供できると思いました。」
「SCDに関して少しネガティブなイメージを持っていたのですが、SCDの方はそれぞれ気持ちがあり、したいことがあり、好きなことがあり自分たちとなんの変わりもなく過ごされていてポジティブなイメージを持ちました。一つ感じたこととして単に話しかけるだけでなく、触れたり身体を使ってコミュニケーションを取ることで不安感を軽減させることができると感じました。このことはSCDの方だけでなく他の患者様でも同じ事で良好なコミュニケーションにより、よりよいリハビリテーションの提供に繋がると思うので臨床に活かしていきたいです。」
「介助者の方がコミュニケーションをとるときの優しい声かけと表情である。当事者には計り知れないほどの困難が有るのだろうが、それを乗り越える力があるのだと感じた。」
診療現場では学ぶことのできないコミュニケーションの重要性を感じ取ってくれたようです。また、制度的な問題についての情報も深刻に受け取めています。
「介護で中々仕事が出来ない中、介護保険が優先されるせいで負担額が増えるとは、なんて理不尽なんだろうと思った。介護とは本人のみでなくご家族も苦しいのだと改めて感じた。そのためこういった介護を必要とする方々へのリハビリはとても大事なのだと思った。疾患に関係なく機能維持・回復に努めることで家族全体の負担が減るからだ。」
中でも、理学療法士であり、同時に、その教育を担当する立場におられて、本会の会長も務めておられる新保さんから、多くのメッセージを受け取ったようです。
「理学療法士で患者でもある新保先生のお話を対面かつ実際に動作なども見せて頂きながら学習することができ、貴重な経験・知識を得ることができたと実感しております。お話して頂いた中から特に自分が興味を持った内容が、歩行動作において、手掌やその他の感覚なしでの歩行とありでの歩行では体幹の動揺や安定性、歩きやすさが全く違うという点です。
新保先生自身も屋外などを歩行される際に、同伴者の方のリュックサックの上方部分の把持出来る部分を持ちながら歩いておられ、手掌からの感覚が実際に自分自身の中の空間把握に影響を及ぼし、良い刺激を得られるようになるとのことで、歩行動作の際には、ただ歩行する、ただ何かを持つだけではなく、把持することによって脳になにかしらの影響があり歩行しやすくなるなど実際に対応する際には考察し、より患者様のQOL向上につなぐことができるようなリハビリテーションを提供できるように知識力や技術の向上に努めていく必要があると思いました。」
私も含めて、医療現場では、患者さんやご家族と私たち医療者との間には、どうしても一定の壁が生まれることになっていると思います。遠慮や時間の制限もあるのですが、それ以外にも、診療に関連しないことを受け付けないような障壁を感じることがあります。つまるところ、なかなか本音での会話にならないのです。お互いのやりとりが固いのですね。ところが、この会では違います。参加させていただくと、その壁がなくなり、気軽に話題が膨らんでいくことが可能になっていくのです。本来は、診療現場でもそのような雰囲気が必要だと思うのですが、現実にはなかなか簡単にはいきません。
そのおかげで、私自身もいい年になりながらも、学ぶことをたくさん持つことができています。整形外科は、専門分野としては、SCDやMSAとは直接関連のない診療科で、皆さんに本当にお役に立っているのか、不安な部分もありますが、これからも参加させていただきたいと願っています。セラピストをはじめ、スタッフ共々、今後ともよろしくお願いいたします。