読み物BOOKS
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2022.03.01
皆さんにとって、大事な日というのはいつでしょう?
誕生日、結婚記念日など、はっきりしている日でしょうか? 中には、引っ越した日とか、手術した日、退院した日など、人生での大きな出来事と関連した日を思い浮かべる方もおられると思います。
「トム・ソーヤーの冒険(The Adventures of Tom Sawyer)」を書いたマーク・トウェインをご存じのことと思います。彼は1835年にこの物語の舞台となっているミズーリ州に生まれています。そして、自分の少年時代の経験を下敷きに、主人公のトマス・ソーヤー少年(通称:トム)がミシシッピ川のほとりの自然豊かな小さな町で、ハックルベリー・フィン(通称:ハック)たちの仲間と一緒に繰り広げた冒険の数々を描いています。この作品は彼が41歳の1876年に発表されています。
そんな彼は印象的な言葉をいくつも残していますが、たまたま見つけた次の言葉がとても心に残ったのでご紹介したいと思います。
それは次のようなものです。下に原文もつけました。
「人生で一番大事な日は2日ある。生まれた日と、なぜ生まれたかを分かった日」
The two most important days in your life are the day you are born and the day you find out why. Mark Twain
「生まれた日」つまり誕生日は誰にとっても大切ですよね。そして、この日を祝ってくれる家族や友人の思い出とともに年々、その重要性が大きくなっていくかもしれません。この日から「私」がこの世に存在していて、もしこの日が来なければ「私」は存在しないのですから、この日が重要であることに関して、異論が出ることはないと想像します。
ではもう一つの日「なぜ生まれたか、を分かった日」は、なぜ、誕生日と同等に大事な日になるのでしょう?
そもそも、私たちは、自分が生まれたわけを分かった日というのを全員が認識しているのでしょうか? おそらく、正確な暦上の日付を即答できる人はむしろ少ないように思います。でも、「なぜ生まれたか?」その疑問を持つことは、決してまれではないと思うのです。普通は自分がこの世にいること、それは当たり前のことであり、その理由など考えることはないかもしれません。しかし、良い意味でも悪い意味でも、両親のことを考えたとき、つまり、両親への感謝を持つような出来事があったときや、逆に、何で自分がこんなに辛い目に遭うのだろうとその理由を両親にかぶせたくなったとき、自らその問いを起こすことは、ありうることだと思うのです。
そして、何より、自分が世の中に生まれた人生の目的を考え始めたとき、この問い「自分は何のためにこの世に生まれたのか?」が心の中に湧き出てくるように思うのです。その問いは、「これまでの人生の意味は何だったのだろう?」と振り返る問いでもありますし、「これから残された人生を私はどう生きれば良いのだろう?」というこれからを考えるきっかけともなります。
彼は、こうした問いかけをさせたいと願い、この言葉を残したのではないかと私は推察しています。正確に、なぜ生まれてきたかが分かった日を知らなくても、なぜ生まれてきたかを考えることに意味があると考えるからです。
若いとき、「生まれてこなければよかった」と世の中をすねてみたことは、どなたにもあるかもしれません。それでも、生きているうちに、自分が生まれたのは、こういうことがしたかったからだ、また、この人と出会うためだったのだなどと、その理由を見出したら、生きる重さが一気に増していくでしょう。
さらに、自分という存在が確かに何らかの成果につながっており、それには多くの人たちの関わりがあると気付くと、自分が生まれた理由がさらに、根深く、納得できる形で理解できるように思うのです。
マーク・トウェインの別の名言に次の様なものがあります。
「夢を捨ててはいけない。夢がなくても、この世にとどまることはできる。しかし、そんな君はもう生きることをやめてしまったのだ。」
Don’t part with your illusions. When they are gone you may still exist, But you have ceased to live.
彼は、人生において、社会に意味があるとか、何か形として残したとかいう成果よりも、自分自身の心の中での生きる意味に重きを置いているように感じます。何かに好奇心を持つこと、そして、興味を持って何かに挑むことが人生の意味であると言いたいのではないかと思うのです。
人からの評価ではなく、自分自身がある意味勝手に作った自分自身の尺度で、自分らしい人生を歩むこと、そこに生きていく意義があるという風に受け止めました。
そんな彼はこんな言葉も残しています。
「今から20年後、君は自分がやったことより、やらなかったことに失望するだろう。だから、もやい綱を解き放ち、安全な港から船を出し、貿易風に帆をとらえよう。探検し、夢を見て、何かを発見するのだ。」
Twenty years from now you will be more disappointed by the things that you didn’t do than by the ones you did do. So throw off the bowlines. Sail away from the safe harbor. Catch the trade winds in your sails. Explore. Dream. Discover.
ICT機器が普及し、同時に、情報を得る方法に関しても、格段にやりやすくなった現代生活ですが、一方で、自分に自信が持てないために落ち込む人も多くなっている気もします。やろうとすれば、昔に比べて遙かにスタートしやすい環境だと思うのですが、なかなかうまくかみ合っていないようです。彼の言葉はそのもどかしい状況を打ち破るためのアドバイスと受け止めることができるかもしれません。
「夢を見るのに年齢は関係ない」と、私は自分自身に言い聞かせています。確かに残された時間は次第に短いものとなってきています。しかし、だからといって、できないと決めつけると、彼が言うようにすでに生きていないのと同じことになってしまいます。人からは荒唐無稽と言われようと、また、何のためかと問われたとしても、にやりと笑い、「生きていくため」とつぶやこうと思っています。