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2021.02.01

最近、思うこと(2021.2)

医療・介護は対人サービスが基本です。したがって、私たちは常に人と向き合って仕事しています。そんな中、昨年初頭より、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大とパンデミックという世界的な流行が起こっています。その対応として、さまざまな新しい生活様式が提案されています。感染拡大を避けるために「三密」を控え、ソーシャルディスタンスを取るように推奨されています。

 

 これが、私たちの職場ではとても難しいのです。これを厳格に守れば、医療や介護は成り立ちません。ことに、ソーシャルディスタンスという言葉については、そのまま訳せば、「社会的距離」となりますが、私たちケアをする方々にとって、社会との距離はとても大切です。社会への参加自体が改善のための手段になりますし、また、社会への復帰が目標にもなるのです。「その距離を近づけないようにしなさい。」というのは、ケアを担当する人間にとって、翼をもがれたような気持ちにさせられました。
 もちろん、理屈は理解できます。この感染症のやっかいなところは、症状が出ていなくてもウイルスを保有している場合があることですよね。そのため自分が知らない間に感染したり、また、人に感染させたりする可能性がいつでもあることになります。そこで、感染経路の一つである飛沫感染を防ぐために、くしゃみや咳によるしぶきが届かない距離(2m程度)を保って行動しましょうということです。でも、2m離れて、困った方のお話しを聞けるでしょうか? 治療やお世話ができるでしょうか? そんな状況で、自分の話を率直に打ち明け、相談する気になるでしょうか? 人間同士がくっついてこそ、私たちの仕事である「ケア」が成立するのですから、これは厳しい注文でした。
 そして、「社会的」という言葉も気になりました。それでは、社会的に分断となり、人間のつながりが絶たれた孤立した状態をイメージすることになります。そこで、WHOが薦めたこともあり、私たちはフィジカルディスタンス(身体的距離)という言葉を用いるようにしています。身体は離れていても、心はくっついていますよというメッセージにもなると考えたからです。

 

 もう一つの推奨は「3密」ですね。これは、「密閉、密集、密接」の三つの密から名づけられた言葉です。この3つの「密」は、日本でCOVID-19の集団感染が起こった場所を見直し、その共通点を探して、出てきたものです。それで、感染拡大を防止するためにこの「3密」を控えるようにすることが求められるようになりました。
順に、考えていきましょう。「密閉」というのは、要するに、人が集まる場所で換気ができない空間にいないようにしようということですね。会議を行う部屋、勉強したり調べ物をする図書館、一緒に大画面を見る映画館、カラオケボックスなどがこれにあたります。大事なのは部屋の広さではなく、換気できるかどうかです。
窓やドアを開けて、空気の流れができるようにすることが大切です。ずっと開けておかなくても、1時間に2回以上、数分間、開けるようにと薦められています。
次は「密集」です。狭いところに人がたくさん集まる状況を作らないということですね。スーパー、学校、電車、ライブハウスや喫茶店、レストランなどがこれに相当します。食べるときにはマスクを外しますから、対面に座り、話しながら食べるというのは、相当危険度が上がる状況となるわけです。時短営業が要請される背景にはこの問題があるということです。
 三つ目が「密接」です。互いに手が届く距離で、会話を交わしたり、運動などをする状況を言っています。これが先に述べましたフィジカルディスタンスですね。そのため、会話や運動などの状況では、十分な距離を保って、マスクを着用することになります。
 私たちの業務で難しいのは、ここです。近づいてこそ、親身となっての相談やケアができるのです。距離が離れて、心が通い合うようにすることは至難の業です。それでも、マスク越しに、「良くなって欲しい」という私たちの思いを伝える努力を続けています。
 そんな中、無神経な患者さんの態度に、がっかりすることもあります。何とか、感染拡大の防止策は守りながらも、心の距離を近づけ、ご希望をかなえようとするスタッフに、声を荒げ、さまざまな対応のお願いを無視しようとする方がおられるのです。その方々が、理屈をご存じないとは思えません。知っているにもかかわらず、現実に、自分に対して、そうした要請や制限が加わることが我慢ならず、許せない思いになられるのだろうと想像しています。

 

 この方々に共通しているのが「自分だけ」ということです。周囲への配慮などまったくありません。そして、料金などの支払いに非常に厳しいことも多くあります。「今(だけ)、金(のみ)、自分(さえ)」のような考え方に思えてなりません。「今」ではなく、「これから(未来)」を、「お金」だけを目的にするのではなく「幸せ」を、そして、「自分」だけではなく、「みんなにとって」を考えるようになれば、ずいぶん生きやすい世の中になると私は願っています。

 

 まだまだ、COVID-19の対応が求められる状況が続きます。個人的には、半年後に迫っているオリンピック、パラリンピックのことが気がかりです。ともかく、目の前で困っておられて、何らかの助けを求めて来られた方々に、その期待に添うケアの提供をこれからも続けなければと思っています。
 皆さん、一人じゃないですよね。つながりましょうね。



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