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2020.02.01

人口の変化と社会保障のあり方(2020.2)

 

日本の人口の変化における問題には三つあると思います。一つは、人口減少です。下の図は1400年前からの人口の推移と今後400年の人口の予測を一緒にしたものです。図の右1/3のあたりから明治以後の推移と予測になります。急速に人口が増えている様子我欲分かります。そして、そのカーブは2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じ、急上昇したときと同じようなペースで減り続けることが予測されています。あと80年ほどすれば、明治初期の頃の人口に戻ってしまうと言うのです。


<図 日本の人口の推移と予測>

 

二番目の問題は高齢化の進展です。2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりますが、この頃の全人口に対する65歳以上の割合は30%を超えるとされています。

 

 そして、その後三番目の問題が浮上してきます。それは、働き手世代の減少です。
 1941(S.16)年1月に当時の近衛文麿内閣は閣議決定にて、「人口政策確立要綱」を決定しています。戦争に向かう軍国主義の中、兵隊を増やすための人口政策といえるでしょう。この時の日本の総人口は7350万人。この人口増強策では、「産めよ、殖やせよ」と一家庭で子どもを5人以上産むようにと呼びかけられ、多子家庭に対しての優遇策が提示される一方で、無子家庭や独身者に増税するという冷遇策を適用し、極端な政策となっています。 現代ではとてもこのような個人の権利を侵害するような政策は現実的ではありません。
しかし、この三つの問題は、ことに社会保障のありように大きな影響を与えます。社会保障といえば、年金、医療、介護・福祉、そして子育て支援の4分野となります。年金はほとんどが高齢者に対するものですし、高齢になるほど医療や介護のニーズが増してきます。そして、少子化対策として、子育て支援も大切な事業となります。このように、社会保障全体はますます求められるような社会になっていくわけです。

 

一方、その制度を支える財源はどうでしょう?財源は三つに分けられます。税金、保険料と自己負担です。人口減少社会で働き手も少なくなると、企業の売り上げは下がることが予測され、国の経済全体が縮小する可能性があります。すると、事業からの納税額は減ることになるでしょう。保険料も支払う人の数が少なくなれば、今よりも減少します。つまり、社会保障が背負う範囲は大きくなると思われるのに、それを支えるお金の算段がつきにくい状況という風にまとめられることになります。

 

こうした予測から、今のままの制度では、社会保障制度が立ちゆかなくなる恐れがあることになります。政府は、社会保障のそれぞれの分野での持続可能性を確かなものにするための施策を打ち出していますが、私は、医療機関の責任者として、また、これからさらに年をとり、自分で自分のことができなくなる可能性を持つ高齢者の一人として、この大変な事態を乗り切るための活動をしなければならないという気持ちになっています。
一つは、医療機関の利用に関すること、言い換えれば、保険を使ってのケアの利用方法についてです。これまで、保険がきくということで、湿布を多めに処方したり、家族のお迎えの都合で退院日が延びたり、家族が受診したとかのついでに血の検査や心電図、さらにはMRIなどを依頼したりすることが、まれではなかったと思います。それは、患者さん側からすれば、負担の少ない方法での医療の利用でしたし、医療機関側では、それが収入につながるという面もあったでしょう。この両者の思惑が一致して、必要に迫られての利用でない適用が合ったと思うのです。しかし、これからはこうした利用は控えなければならないと思っています。でなければ、本当に必要な人に必要な検査や治療を行うことができなくなる可能性があるからです。
介護の分野でも同様です。できないことを代わりにするというケアが多すぎるかもしれません。できないことをできるだけご本人にできるようになってもらう、時間がかかってもご本人にしてもらうというスタンスをより多くの場面で取り入れていく必要があるでしょう。ここでも、ケアを受ける側と提供する側の利害が一致していることが、改革を難しくさせます。

 

しかし、本当に、今までと同じでは、この大きな人口の変化に伴う課題の解決は不可能です。一人一人が自覚し、繰り返しますが、必要な人に必要な対処が、必要なタイミングで効率的に実施されるよう、頭の切り替えがすべての国民に求められているように思っています。それは、物質的な意味だけではなく、真の意味で「豊かな国」「誇れる国」であり続けるための、最低限の条件であるように思います。



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