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2018.12.01

超超高齢社会の運動器ケア(2018.12)

 

 人口問題を研究する学問では、全人口に占める65歳以上の人の占める割合を「高齢化率」と呼んでいます。そして、それが7%を越えると「高齢化社会」、14%以上で「高齢社会」、21%以上で「超高齢社会」と分類されてきました。
 日本は2007(H.19)年に21%を越え、2017(H.29)年には28%となっています。この状況はおそらく想定外で、公式ではないですが、私は「超超高齢社会」と呼ぶしかないのではないかと考えています。この傾向は少子化の継続、または進展によって、今後も続くと予測されています。2017(H.29)年の推計では、2040年には35%を超えるとされているので、こうなると「超超超高齢社会」となるのでしょうか? 実は、この2040年で、75歳以上の人の割合は20.2%なので、高齢化率の定義を変えるのが実際的かもしれません。ちなみに、2017年では、この数字は13.8%になります。

 さて、実感として感じておられると思うのですが、加齢により、人間の持つ機能は低下しますし、病気やケガも増えていきます。そのために、医療や介護の社会全体でのニーズは高くならざるを得ません。避けることができないこの事態を受け止めるために、制度の見直しが必要でしょうし、これを利用する国民の意識も変革が求められるでしょう。医療・介護に関わっている私たちとしても、行動を起こさねばならないと危機意識を持って取り組んでいます。

 

人は、頭脳を働かせ、情報を取り、判断し、そして、肉体を使って行動し、一生を過ごします。私たちはその身体を自分のやりたいように使う神経、筋肉、骨、関節といった「運動器」に起こる問題を専門として、診療を展開してきました。高齢化によるこの運動器に起こる問題は幅広く、そして、生活に直結したものとなります。運動器自体に加齢によるトラブルが起こってきます。身体のあちこちが痛くなり、若いときのように自由に使いにくくなってきます。関節の軟骨がすり減ります。背骨が変化し、神経に影響を与えます。筋肉は痩せてきて、関節は硬くなります。整形外科や整骨院は、高齢者であふれることになります。
そして、骨が薄くなる骨粗鬆症になる人が増えて、そして、バランスを取るのが苦手となると、転倒により骨折を起こすことも多くなります。手首、肩・あばら、背骨、股の付け根が骨折の多く起こる場所ですが、この中でも股の付け根の骨折は痛みが強く、歩けないため、できるだけ早く手術をして動けるようにしっかり固定したり、人工のものに取り替えたりする手術をすることが多くなっています。安静にして骨がひっつくのを待っていると、その間に身体が弱り、床ずれができ、頭もぼけてきたりで、いいことがないため、リスクを十分管理して手術した方がいいという判断になることが多いのです。

関節や、脊椎の手術でも同じですが、こうした手術の後で、リハビリテーションがうまくいかないと手術の値打ちがありません。しかし、どの地域でも、こうした対応が可能かといえば、必ずしもそうではない現実があります。

 

こうした運動器の問題だけではなく、老化により血管も詰まったり破れやすくなります。それが脳や心臓で起こると、脳卒中や心筋梗塞になります。がんも高齢化とともに増加します。肺炎もまれではありません。そして、こうした病気のために入院して治療を受けると、安静にする期間がどうしてもあるために、立ち上がったり、歩いたりすることが以前よりしにくくなり、ひどい場合は、歩いて入院したのに、車いすで退院という事態にもなりかねません。

 

今並べ上げたような運動器に起こる加齢による問題は、今のところ、単独で対処されることがほとんどです。つまり、骨折が起これば、手術できる整形外科ある病院で対処されるでしょう。しかし、そういった施設では、リハビリができるとは限りませんし、骨粗鬆症の治療が行われることは多くありません。そのために、退院してすぐに別の場所を骨折して運ばれるという辛い事態も決してまれではないのです。大きな病気で入院した後の運動器の障害も、きちんと対処できているとは思えません。
高齢期に起こる運動器の問題を、単独ではなく、全体としてとらえ、それぞれのケアを担当する人や組織がつながらなければ、いつまでも後追いの状況が続き、予防対策にはならないと考えています。それでは、冒頭にご紹介したこれからの社会に活力が失われてしまうと危惧するのです。
運動器を専門とする私たちから、地域の他の事業所の皆さんへの情報提供を行い、おひとりお一人の事例について、詳細な経過をお伝えし、丁寧に連携できる体制の確立に取り組んでいこうと話し合っています。



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