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2011.06.01

原発事故で思うこと(2011-6)

推進派からはあれほど安全性について、自信を持って語られてきた原子力発電所ですが、今回の地震と津波によって、もろさが露呈しました。初期の対応について、問題がなかったのか、国会でも議論になっています。私からすれば、国を代表する首相と管理責任のある東京電力が、周辺住民を始め国民をさておいて、お互いに責任のなすりつけ合いをしているだけのように見えて仕方ありません。
フリー百科事典ウィキペディアによると、原子力発電所とは、「ウランやプルトニウムが核分裂反応をする際に発生する熱で水を沸騰させ、水蒸気で蒸気タービンを回して発電する発電所」とされています。発生する熱を有効に利用しているはずが、冷却機能が失われると水素爆発が起こる危険性もあるし、さらには燃料棒(燃料集合体)が溶解し、原子炉の底を溶かし(溶融貫通)炉外に漏れ出す危険も生じます。これが地下水脈などと反応すると水蒸気爆発となり大規模な放射能汚染も起こりかねません。
1979年アメリカでのスリーマイル島原子力発電所事故、1986年当時のソ連でのチェルノブイリ原子力発電所事故に引き続き、今回福島第一原子力発電所にて炉心溶融までに至ってしまった事故が起こりました。
いわば、「原発安全神話」が崩壊したと言えるでしょう。そもそも、「神話」と呼ばれるものは常に崩壊する性質を含んでいます。日清・日露と大国に勝利した日本軍はその当時「不敗神話」を信じていました。その流れから方針を切り替えることができないまま第二次世界大戦に突入し、1945年ポツダム宣言を受け入れ敗戦が確定しました。いくら「終戦」と言い換えても完全な敗北で、ほぼ無条件降伏です。
その後、経済の分野でもいくつかの「神話」が生まれています。「株神話」「土地神話」「銀行神話」などです。バブル経済の崩壊、そして、リーマンショックによって、バーチャルな経済活動がいかに危うい土台の上にあるものか思い知らされ、これらの神話も崩れ去りました。
神話を生み出す人々は、安定したものを追い続けているように思えます。そしてそれに依存し、頼り切っているようにも見えます。そこでは自己の価値判断や冷静でできるだけ客観的であろうとする批判的姿勢が影を潜めています。過去の成功体験に酔ったまま、楽観的な将来予測に浸かっているだけの印象です。うまくいかないとき、他責的に行動します。誰かの責任にして、その立場のものを徹底的に批判し、自分は新たな依存先を求めるのです。
「原発安全神話」の崩壊をきっかけに、私はエネルギー問題を真剣の考えるべき時だと思っています。図1のように、日本のエネルギー自給率は、原子力を輸入とするとわずか4%にすぎません。これからどのようにエネルギーを供給していくのか、将来に向けて重要なテーマとなります。
2001年での主要国の電力供給源を図2に示します。自然環境や自国の資源の保有状況などにより各国でそれぞれ供給源が異なり、特徴があります。カナダでは水力発電の割合が突出して高いですし、中国、ドイツ、アメリカでは半分以上を石炭による火力発電によっています。
 
フランスでは原子力が77.1%と非常に大きくなっています。この原稿を書いている5月末、フランスのドービルで主要8カ国首脳会議(G8サミット)が開催されています。福島第一原子力発電所の事故により、日本がこれからのエネルギー政策を変更するのかどうか、ホスト国のフランス サルコジ大統領が関心を寄せるのは当然と言えます。
日本は多くの発電源を組み合わせて供給する体制であることが特徴となっています。しかし、原子力の比率に関していえば、フランス、韓国に次いで3番目に高い比率です。次の表は原子力発電に関する各国の状況をまとめたものです。
日本のエネルギー計画も、増加するエネルギー需要を原子力発電によってまかなおうとしており、この表でも計画中、建設中を含めると多くの期待を寄せていることが読み取れます。
原子力発電は、大きな原発事故により反対が多く開発が止まっていましたが、その後、原油価格の高騰と、石油や石炭による発電による大気汚染からの環境問題があり、逆に10年ほど前から再評価され、積極的に取り組まれるようになっていました。しかし、今回の事故により、この計画の見直しがなされることは間違いありません。
これから、どのようなエネルギー対策が好ましい形なのか、政府に任せるのではなく、国民ひとり一人が考え、意見を述べねばならないと私は感じています。国に依存し、何かあった時にその責任を声高に訴えるだけではなく、主体となり、積極的に方針決定に関与すべきです。今回の事故は、その方針を再考するよい機会となると思います。
いずれにしても、節電は大事なテーマだと思います。日本中に設置されている自動販売機の明かりや冷却にかかる電力、また、リモコン入力等の操作に備えて待機するオーディオ・ビデオ製品や、給湯器、エアコンなど、コンセントに接続された家電製品が、電源の切れている状態(待機時)で消費する待機電力も意識する必要があるでしょう。ウィキペディアによると、「2007年時点で、日本の一般家庭における待機電力は一世帯あたり平均年約180KWhとされており、これは年間の電力消費量のほぼ1ヶ月分に相当する」そうです。
日本の各電力会社での原子力発電による比率は、北海道電力 : 約40%、東北電力 : 約16%、東京電力 : 約23%、中部電力 : 約15%、北陸電力 : 約33%、関西電力 : 約48%、中国電力 : 約8%、四国電力 : 約38%、九州電力 : 約41%、沖縄電力 : 0%となっています。関西電力が一番高い比率で約半分を原子力に依っています。そして、同社の原子力発電所は、福井県若狭地方に集中して建設されています。中でも敦賀市で日本原子力研究開発機構が持つ高速増殖炉「もんじゅ」では、昨年の8月26日、炉内中継装置がつり上げ作業中に落下する事故が起き、その後、24回以上の引き抜き作業を試みていますが、成功せず、いまだに解決することができていません。発電できていない発電所の維持費は年間数百億円ともいわれています。安全性と経済性をにらみながら、こうした事例からも今後の計画を考えねばなりません。
原発を即時に操業停止させると確かに安全性は保証されるでしょうが、そのために生じる電力供給不足を覚悟しなければならず、「計画停電」は受け入れなければなりません。ことに、関西地区にある企業や住んでいる人はこの可能性があります。原発を段階的に廃止していく方針は妥当な考えですが、原発に代わるエネルギー源が整備されるまではこれまでと同様のリスクを受け入れることになります。また、エネルギー源の整備は容易なものではなく、多額の財源の確保と長期にわたる公共工事が必要です。つまり、社会保障など国の支出の割合を変化させるか、あるいは、増税により収入を増やして対処するか、また、その両方の対応が求められるでしょう。
科学技術の進歩を信じ、政府・電力会社が安全性を確保することを前提に、これからも新規の原発を建設し、原子力発電に依存する方針もあるでしょう。
皆さんは、どの方針に賛成されますか?現時点での問題というだけではなく、次の世代に大きく関わる問題です。じっくりと考えてみてください。
今回は、原発事故を契機として、これからのエネルギー問題を身近なこととして一緒に考え、意見を述べていきましょうと提案しました。でも、まずできることは「節電」です。コンピューターや家電製品で、ACアダプター(黒いかたまり)が付いている機種がありますね。これを触ると、機器を使っていないときにも熱くありませんか?つまり、使っていないときでも電力を消費している証拠なのですね。最近ではコンセントに電源を切る仕組みが組み込まれたものも広まっています。わざわざ外出のたびに抜くのは面倒という方も、これを使えば、比較的簡単に節電できます。僅かずつでも、みんなが協力することがまずは求められている気がします。よろしくお願いします。


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