「ねんざ」について |
前回は、よく起こるケガのうち、代表的な「打撲」を取り上げました。今回は、「捻挫」のお話です。「捻挫」は関節のケガです。 手足でも、背骨でも、顔でも、関節のおかげで動かすことができます。動く原動力になっているのは筋肉です。筋肉の端が「腱」というスジになって、関節近くの骨にくっつきます。筋肉が神経の命令で収縮すると、その力が腱を伝って骨に届き、それで、関節が動くのです。腱が切れてしまうと、いくらりきんでも力が伝わらないために、関節は動きません。もちろん、神経や筋肉がうまく働かないと、関節はうまく動きません。アキレス腱が切れてしまうと、背伸びをしようとしても踵が地面から浮かないのです。関節がきちんと働く条件は、神経、筋肉や腱だけではありません。その他にも必要な条件があります。 一つは、骨格が動く構造になっていることです。関節のところで骨同志がくっついてしまっていては、動くはずもありません。骨の形が正常であることが最低条件です。そして、動いて、接触する部分がざらざらしていては、スムースに動きません。そこで、できるだけ摩擦せず、効率よく動くために、骨の表面を軟骨が覆っています。さらに、わずかな量の関節液が関節内にあって潤滑油として働き、滑りを良くしています。 こうした構造に問題がなくても、まだ、正常の関節とはなりません。安定していることが求められます。関節を安定させる働きをしているのが、「靱帯」と呼ばれるスジです。骨同志を結んで、変な方向には動かないようにしているのがこの「靱帯」の役割です。たとえば、手の指では、親指をのぞいて、各関節は曲げたり伸ばしたりできますが、肩のようにぐるぐる回すことはできませんね。これは、骨と骨の横の部分をしっかりと靱帯がつないでいるからなのです。今回お話しする「捻挫」は、実は、この「靱帯」のケガのことをいいます。 関節に変な力が加わった時に「捻挫」が起こります。それは、関節が、普通には動かない方向に、動かされてしまったからです。その結果、「靱帯」を傷めることになります。踵の高い靴を履いていて、段差でつまずくとします。足首は、内側の方にひねられてしまいますね。それは、いつもの、足首の上下の動きとは違う方向です。そのために、足首を安定させている靱帯に強い力がかかってしまって、時には、切れてしまうこともあるのです。中程度の強さでひねると、一部が伸びるということも起こります。いずれにしても、靱帯が傷むと関節が不安定になります。「足首の捻挫が癖になった」という話は、残念なことに、安定させる靱帯の働きが弱ってしまって、足首がぐらぐらになった状態だと推測できます。ただの捻挫とバカにしてはいけない場合もあるのですね。 前回、打ち身をすると内出血を起こすので、ケガしてから早い時期に「冷やす」ことが大切だと強調しました。今回の捻挫も、初期の対処方法はまったく同じです。関節をひねって、靱帯に強い力が加わると、その部分でやはり出血が起こります。この「内出血」を最小限に止めるのが、初期の対策の肝心なところです。しっかりと冷やしてください。そして、不安定になっていますから、圧迫・固定することが大事です。傷んだ部分にそれ以上の負担がかからないようにするのです。腫れがひどい場合は、横になって、心臓よりも高い位置に上げればよいでしょう。 現場での「打撲」や「捻挫」の対策は、完璧にご理解いただけたと思います。私たち整形外科医は、こうした捻挫を診たらどのように対処するか、次回は、詳しくご説明しましょう。 ”プチトマト”の「健康コーナー」トップページへ |