「男の理屈」から、「女の感性」の時代へ

 これまで、科学的な思考というのは男性の得意分野でした。西洋の分析主義では確かにそうでしょう。物事の原因をどんどん細かく分析して突き詰めるやり方です。最近では、遺伝子レベルの研究まで行われるようになり、治療にも応用される可能性があり、期待が高まっています。

 一方では、こうした分析に次ぐ分析という方法論に異議を唱える学者も出てきました。全体というものを細かく分けていって、小さな部分にしていくことは、物事を整理して考えるには便利なやり方ですが、一旦細かく細分化された部分を再度かき集めても、元の全体と同じではないという反論です。一人の人間を臓器別に、次にもっと細かく細胞レベルに、さらに、遺伝子レベルに分けてみる。それらを集めれば、元の一人の人間というものが作ることはできないというのです。同じ遺伝子、同じ細胞でも同じ臓器にならないかもしれないし、同じ臓器を集合させても同じ人間にならないという意見です。この考え方からすれば、物事をいつも大きな視点から捉えなければならないことになります。人間を全体として理解しようとする東洋医学的な考え方がもてはやされるようになってきたのは、西洋医学の分析と細分化の行き過ぎによる反省から生まれてきました。

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 ガンという病気があります。通常、人間の身体はどの臓器でも、古くなった細胞は新しい細胞と入れ替わり新陳代謝を繰り返しています。髪の毛でも、皮膚でも、骨でも、胃の粘膜でも、白血球でも、すべての細胞はこうした回転をしているのです。その回転がいつも約束通り行われておれば問題はないのですが、時に、元の細胞よりも若い細胞が生まれてしまうことになります。「若い」というのは、良い意味ではありません。もともと、生物は、一つの受精卵から細胞分裂を繰り返し、異なる機能を持ったさまざまな臓器となり、最終的には一個の個体を作り上げていきます。分裂をしながら特徴を持った細胞へと「分化」を遂げていくのです。若いというのは、この「分化」が完成する手前のものになるという意味です。したがって、皮膚でも粘膜でも白血球でも、成熟して分化した特徴を持った細胞として生まれ変わるのではなく、その手前の段階のまま、未成熟で特徴のできあがっていない細胞が出てきてしまうのです。これの典型が「ガン細胞」です。一定のルールでの増殖をせず、掟破りの増え方をしてしまったり、隣の組織への進出(浸潤)をしてしまうのは、こうした未成熟の細胞であるからです。

 これに対して、これまで西洋医学では、切り取ってしまう手術、薬でやっつけようとする化学療法、放射線で焼き切ろうという放射線療法という大きく分けて三つの治療法で対抗してきました。しかしながら、あまりに勢いの強いガン細胞の増殖に、これらの方法では負ける場合もあります。そうなると、痛みを取り、終末期を安楽に過ごすよう緩和ケアが提供されるだけでした。

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 その一方で、西洋医学的な考え方では説明のつかない事例も生まれ始めました。肺ガンを指摘されたけれども、自分の研究成果をまとめるまでは入院しないと頑張っていた科学者の例があります。彼は自分がガンであることを告げられても、自分の仕事を優先させました。「入院して治療を受ければ、途中で自分の仕事を放り出すことになる」そう判断した彼は徹夜に次ぐ徹夜で仕事を仕上げます。すさまじい集中力で、立派な研究成果を発表します。一段落して、診断した医師を訪れます。医師はレントゲン写真に写った影を見て驚きます。ガンの塊が小さくなっているのです。医学的な処置を加えたわけではないのに、ガンは明らかに改善の方向に向かっていました。

 こうした例は世界中で報告されています。ガンと精神状況との関連が言われるようになりました。笑うと免疫の働きが良くなるなどという研究も、身体と心の密接なつながりを認めた人たちのお陰で分かってきました。免疫に関連するNK細胞が元気になるというのです。先ほどのような例を研究する「腫瘍精神学」が開拓されました。その中心的役割を果たしたのは女性の科学者でした。

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 これからの時代、男性が論理的に分析して物事を考えていくよりも、女性が感性で本質を見抜き、対応を練っていく方がマッチしていくような感じです。一昔前、男は外に出て7人の敵を向こうに回して必死で働き、家で待つ家族を養い、女は家庭を守り育児と家事を担当すると教えられていました。そうしたそれぞれの役割は完全に崩れてきました。むしろ、男は、女の力が最大限に発揮できるような社会の仕組みを準備してあげることが大事な時代となってきたようです。確かに、システム作りは男の方が得意のようにも感じます。

 四角四面の固い頭からは新しい社会は生まれないと確信します。論理性の西洋文化ではなく、優柔不断のようで融通無碍な東洋的感覚、本質は守りながら柔らかでしなやかな対応ができる女性の感性がこれからの時代をリードする、そんな予感がします。

 皆さん、周囲を見渡して下さい。きっと、素晴らしい輝きを放ち行動する女性の姿が何人も眼に飛び込んでくるでしょう。男性諸氏、彼女たちの活躍の場を整備する役割、やってみませんか?