注目の抗菌薬関連下痢症(クロストリジウムディフィシル)について

 今回は、少しマニアックな感染症のご紹介をいたします。マニアックと言いましても、厚生労働省からは各医療機関へ注意を呼びかける通知が届いておりますので、注目の感染症でもあります。

発熱や感染症で抗菌薬を処方される事がありますが、長期にわたり飲み続けると消化管に住んでいる「賢い菌」の住む環境が悪くなり、代わりに毒素を出す「悪い菌」(クロストリジウムディフィシレ)が増え、腸炎や下痢を起こし、その下痢便から排出された病原菌が病院などで拡がる事が問題になっております。この腸炎には特徴があり(どんな?)「偽膜性大腸炎」を起こし、時には内視鏡(検査?)や手術が必要となる恐ろしい病気でもあります。そして、やっかいな事に症状がないまま、自分の消化管に保有する場合が多く、感染を拡げてしまうリスクも抱えています。

 イギリスでは、1990年の発生例は1000例であったのに、2004年には、44,488例もこの病気が増加している事がニュースで取り上げられ、オランダやカナダ、米国でも院内感染が報告されています。 例えばカナダのケベック州では、発生率が5倍に増え死亡率も4.7%から13.8%に増加しているそうです。

 重要な予防策は、不必要な抗菌薬を長期間飲まない(医師へ求めない)、排便をしたときには手を流水と石けんで常にしっかり洗い、食事前にも必ず手を洗う事です。

「賢い菌」から「悪い菌」へ変化していく腸内の環境
「賢い菌」から「悪い菌」へ変化していく腸内の環境
 (http://www.nih.go.jp/niid/topics/ 国立感染研究所ホームページより引用)
法人事務局 感染安全管理担当
感染管理認定看護師 森下 幸子