第13回 はぁと&はんずアカデミーの開催に寄せて

はぁとふるグループ代表 島田 永和

 今年も「はぁと&はんず アカデミー」の時期となりました。学会長の中村恵里子マネジャーはじめ、準備に当たってくれた皆さん、そして、本日発表される皆さん、ご苦労様です。皆さん方の努力と熱意は、実り多い一日への原動力となると確信しています。

 さて、この時期はラグビーのシーズンでもあります。島田病院は今年からトップリーグに所属する近鉄ラグビーチーム「ライナーズ」のチームドクターを引き受けています。試合会場で身近に選手のぶつかり合う音を聞くと、「人間ってすごいモンだな」と感心させられるほど迫力があります。この競技でジャパンの監督も務めた平尾誠二氏が、スポーツ選手・指導者交流会の講演にて、外国選手と日本選手の違いについてこんな風に話しておられました。

 「優れた外国人選手には一つひとつの局面において、たくさんの選択肢を持っているが、日本選手は残念ながらよい選手でもせいぜい二つほどのプレーのバリエーションを持っているに過ぎない。おそらく、指導を受け選手として成熟していく過程で指導者の言うことを聞くばかりで自分から考えたり作ったりする習慣が身に付いていないためだと思う。ワールドカップなど世界の厳しい舞台で勝利を上げるためには、こうした選手の意識を変える必要があるだろう」

 私は、この話と「自立」とを結びつけて考えていました。ラグビーやサッカーは野球と違って、一旦ゲームが始まるとベンチからの指示はほとんどできません。一度として同じ状況はないと言われるように、めまぐるしく変わる瞬間瞬間に、選手は自分の判断でプレーを選択して実践していきます。野球のように、一球ごとに監督からのサインを見るという暇などないのです。それだけ、選手個々の力が問われる競技なのでしょう。しかも、チームでの戦いですから、一人の選手の判断が他の選手に伝わって連動した動きにならなければ、相手を打ち破ることは不可能です。一人の並はずれた選手の存在だけでは勝てないのです。水準を超えたチームプレーを行うとすれば、創造性を持った選手とその発想を理解し、連係したプレーができるという同等もしくはそれ以上の能力を持つ選手の存在が求められることになります。現在日本はこうしたタイプの団体競技では、国際的に上位を占めるには至っていません。

 私には、それは「日本人の自立」というテーマと重なって映ります。ヘルスケアにおけるチームアプローチやお任せ医療ではない新しい形の患者-医師関係も同じ位置づけのテーマだと思います。それらはいずれも、まだ未成熟です。教育(養成)過程から指導者の意識が変わらなければ、選手や技術者が変わることはなく、新しい時代にならないとすれば、根本的な改革には一つ以上の世代を待つ必要があるのかもしれません。

 しかし、「はぁとふるグループ」はいち早くこの課題に取り組んで来ています。終末期ケア、インフォームドチョイスなどは、具体的な課題です。チームでのお互いの「自立」への取り組みなのです。

 本日、多くの演題が出され討議が行われるでしょう。その中から、自立し、多くの選択肢を手元に持つスタッフが一人でも多く育っていくことを楽しみにしています。そのためにも、できるだけたくさんの方からの発言や質問を期待しています。よろしくお願いします。